国立環境研究所は、「サイエンスキャンプ2006」(主催:科学技術振興機構、実施運営機関:日本科学技術振興財団、共催:国立環境研究所ほか実施機関)に協力し、2006年7月26日(火)〜28日(木)の2泊3日、つくばキャンパス及び富士北麓フラックス観測サイトそれぞれにおいて3つのテーマで体験合宿プログラムを実施します。
 サイエンスキャンプは、最先端の科学技術を直接体験・学習できる科学技術体験合宿プログラムです。高等学校、中等教育学校後期課程(4〜6学年)または高等専門学校(1〜3年)等に在籍する生徒さんであればどなたでも応募できます。詳細・応募方法はサイエンスキャンプホームページ(http://ppd.jsf.or.jp/camp/2006/)をご参照下さい。
 環境問題や環境保全に関する科学に関心のある生徒さんの積極的なご参加をお待ちしています。

 昨年度の国立環境研究所のサイエンスキャンプの様子は、こちらのサイトで紹介しています。

筑波山(7月28日に自然観察・フィールド調査予定)
国立環境研究所本館
実験機器の操作説明
森林中に立てたタワーからの観測
富士北麓サイトからの絶景

国立環境研究所サイエンスキャンプ2006の概要
植物コース 6名(茨城県つくば市、担当:中嶋信美生物圏環境研究領域室長)
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 現在、人の活動により環境中に様々な有機化学物質が放出されています。それらの多くは環境中で植物や土壌細菌によって吸収・分解されます。本コースでは植物によって有機化学物質が吸収されていく様子を観察します。具体的にはプラスチックの素材として良く使用されているビスフェノールAという化合物を水に溶かし、そこへ植物の根を浸します。ビスフェノールAの濃度を高速液体クロマトグラフ装置(HPLC)で測定し、時間とともにビスフェノールAの濃度が減少して行く様子を観察します。また、私たちヒトを含めた生物はまわりの環境と深い関わりを持って生活しています。生物と環境との関わりを知るためには、その生物をよく知らなくてはなりません。そこでこのコースの後半では、筑波山山頂付近での植物観察を通じて、基本的な観察のテクニックを学びます。生態系の中でそれぞれの植物がどのような役割をしているのかを考えながら、植物の生き様を学ぶトレーニングを行います。

 

微生物コース 6名(茨城県つくば市:担当、岩崎一弘水土壌研環境研究領域主任研究員)
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 私たちのまわりには、非常にたくさんの微生物(細菌)が生きています。例えば土壌1グラム中には10億匹ほどの土壌細菌が住んでいるといわれています。これらの多様な細菌は、環境中に放出された様々な化学物質の分解に大きな役割を担っています。本コースでは、身近な環境中の微生物の多様性を遺伝子解析により観察します。先ず始めに、公園、街路樹、湖等身近な環境から土壌あるいは水試料を採取します。次に、これらの試料中から微生物由来のDNAを抽出します。そして、多様性を観察するために、特定の微生物遺伝子を遺伝子増幅装置(PCR装置)を使って増幅します。さらに、電気泳動装置(DGGE)で分離して多様な微生物遺伝子によって生じる模様(電気泳動パターン)を観察し、それぞれの環境試料での結果を比較します。少し 難しいですが、この方法は日本のみならず世界中の研究室 で行われている世界標準技術ですので、頑張って下さい。

森林の中で地球温暖化を考えよう 8名 (山梨県富士吉田市:担当、藤沼地球環境研究センター室長)
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 植物や森林は地球温暖化の主要因である二酸化炭素の大きな吸収源となっています。しかし人間活動によって排出された二酸化炭素が自然の生態系の中でどのように、どの程度まで吸収されていくのかについてはまだ十分わかっていません。地球温暖化防止に対する森林生態系の役割を評価するために、二酸化炭素がどの程度、どのように吸収/放出されるのか、世界的な規模で観測研究が進められています。富士北麓フラックス観測サイトでは、世界各地で行われる観測研究と連携して、二酸化炭素の吸収/放出などの様々な森林生態系の機能を最新の計測技術を用いて自動観測しています。 今回のサイエンスキャンプでは、富士山麓の広大な森林の中で、最新の計測技術による観測の実際を体験するとともに、森林植物の光合成・土壌の呼吸能力などを、手作りの簡易観測システムを用いて測定し、最新の計測技術と比較します。また、森林に生育する樹木や林床植物の分布や生育程度を調査し、森林生態系がどのように成り立っているのか、その特徴を理解します。 さらに、地球環境問題を理解するための基本的な知識や最新のデータ、環境問題を理解するための科学的なアプローチについても、キャンプの中でわかりやすく説明します。皆さんもこのキャンプで環境を見る目を磨いてみませんか?