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2014年12月3日

COPへの「参加」とは?

 COP会場では、文字通り朝から晩まで、多くの会議や各種イベントが開かれています。それらに参加する人の食事や飲み物が必要になりますが、1万人規模の会議となると大変です。COP20会場には、あちこちにコーヒーショップがありますが、例年に比べると、食事をとるところが少なく、お昼休みのカフェテリアには大行列ができています。

写真1

写真1:ある日の筆者のお昼ごはん。ペルーらしいものは、チチャモラーダ(紫色のトウモロコシをレモンで煮込んだジュース)とルクマ(インカ時代の神話にも登場する果物だそうです。かぼちゃに近い味でした)のムース。

 さて、今日は、COPへの「参加」について、解説したいと思います。COPは、気候変動問題に様々な観点から取り組んでいる人が一堂に会する場です。今回も、参加登録者数は、12,531人にのぼっています。内訳を見ると、政府関係者:6,817名、国連関係者:270名、専門機関等:201名、国際機関:554名、NGO:3,629名、メディア:1,060名、となっています。私は、国立環境研究所から参加登録をしており、上記の区分では、NGOに含まれます。

 気候変動COPは、政府間交渉の会議ですので、各国の政治家や、気候変動問題に関連する省庁関係者同士の議論がメインです。国際機関等からの参加者は、交渉に関連する情報をインプットします。メディアからの参加者は、交渉の進捗状況などを取材して、このCOPの場で何が起こっているかを知らせています。では、NGOは、どのようにCOPに参加しているのでしょうか?

写真2

写真2:日陰を求める会議参加者達。朝晩は肌寒いぐらいなのですが、日中は、日差しが強いです。

 気候変動COPに参加しているNGOというと、環境保護団体を思い浮かべる方が多いのではないかと思いますが、それだけではありません。私の所属機関である国立環境研究所は、研究NGO(RINGO)のひとつですし、産業界NGO(BINGO)、若者NGO(YOUNGO)、農民連盟(Farmers Union)、少数民族に関するNGOなど、実に多様なNGOが気候変動COPに関わっています。

 COPに参加する方法はいくつかあります。そのひとつとして、サイドイベントの開催とこれへの参加があります。COP期間中、多くの各国政府、国際機関、研究機関などが、自らの成果のお披露目のためにサイドイベントを開催します。もともとは、お昼休みと会議終了後の夕方の時間帯だけでしたが、近年は、開催希望が多いため、サイドイベント開催時間を拡大しています。なお、今回は、COP20全体のイベントのほか、EU、米国、日本、中国、インドネシアなどが自国のパビリオンを設置しており、各国の研究機関等や事業の成果などを発表するサイドイベントが開催されています。この各国パビリオンでは、研究成果のみならず、各国の特色を前面に打ち出しているところが面白いです。国立環境研究所は、マレーシア工科大学(UTM)と共催で、公式のサイドイベントを開催するほか、日本パビリオンで4つのイベントを主催/共催します。

写真3

写真3:日本パビリオン。大きな折鶴が飾られており、中に置いてあるプログラムなども和のイメージをたくさん取り入れています。
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写真4:ペルーパビリオン。アマゾンの先住民に扮した人達と写真を撮ることができます。
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写真5:米国パビリオン。アメリカ航空宇宙局(NASA)の展示がひときわ目を引きます。
写真6
写真6:中国パビリオン。

 参加方法の2つ目として、展示ブースを設置することや、その訪問があります。会場内には、政府、国際機関、NGO等によるたくさんの展示ブースが並んでいます。ブース設置を希望する各団体に与えられるスペースは狭いのですが、各団体が事業や研究成果等のアピールのために工夫をこらして展示しています。

 国立環境研究所は、COP10(2004年)以降、毎年、展示ブースを設置しています。今回は、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)及び温室効果ガス観測技術衛星2号(GOSAT-2)、アジア太平洋統合評価モデル(AIM)による最新の研究成果・計画などを紹介しています。

写真7

写真7:国立環境研究所の展示ブース(写真提供:(独)国立環境研究所環境計測研究センター Pang Shijuan氏)

 参加方法の3つ目として、交渉の傍聴があります。近年は、動画配信、交渉中のドキュメントの電子共有もかなり進んでおり、日本にいながら、遠くの国で開催されるCOPにバーチャル参加という方法もあります。ですが、すべての会議の動画が配信されるわけではないことや、COPの場に来ると様々な専門性を有する方と意見交換ができることにメリットを感じているので、私は、12年前から、毎年、COPに出席しています。また、交渉を傍聴するほか、交渉に自らの主張を反映させようと、ロビー活動をする人達もいます。

 このように、COPには、政府関係者として気候変動交渉に直接携わるだけではなく、様々な参加の道が用意されています。現地に来てCOPに参加するには、COPに認められた団体を通じて参加登録を行うことになりますし、近年は、参加希望者が多いことから、NGOに対し、参加者数の枠があらかじめ配分されるようになっています。したがって、バーチャル参加以外は、誰でも自由にCOPに参加できるとまでは言えませんが、参加への道は他の条約等の会議に比べると格段に広く開かれていると言えます。

 欧州の著名な交渉官が、“COPでの交渉は大変だが、旧友たちに会える場でもある”とTwitterに投稿しているのを見ました。気候変動COPは、20年にわたって毎年開催されているので、まさに大きな同窓会のような場でもあります。

 私は、主に、気候変動への適応策や資金支援に関する制度について、どのような経緯で合意が形成されているのか、新しい国際枠組みにおける位置づけとはどのようなものかを把握するために、毎年、COPに参加していますが、交渉経緯の把握にとどまらず、COPの場で多くの人と会っていろいろな話をすることが、研究の活力になっています。

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写真8:様々な機関の展示ブースが並ぶ会場

文・写真:久保田 泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)


※全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)ウェブサイトより転載