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2014年12月1日

COP20、始まる

 12月1日(月)、初夏のリマ(ペルー)において、気候変動枠組条約第20回締約国会議(COP20)、京都議定書第10回締約国会合(CMP10)が始まりました。気候変動COPは、1年に1度開催され、開催地は国連5地域が順番に担当することになっています。今年はラテンアメリカ・カリブ海グループ(Group of Latin American and Caribbean Countries:GRULAC)の番です。昨年のCOP19会場(ワルシャワ(ポーランド))はとても寒かったのですが、今年は、会場外は爽やかなお天気、会場内だと暑いぐらいです。

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写真1:COP20会場正面玄関

 午前中、COP20の開会総会が開催されました。同会合において、ペルーのマヌエル・プルガル・ビダル環境大臣がCOP20とCMP10の議長に選任され、マルチン・コロレツCOP19議長(ポーランド)からプルガル・ビダルCOP20議長へと、木槌の引き継ぎが行われました。

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写真2:木槌(決議採択の時などに議長が使うもの)の引き継ぎ

 プルガル・ビダルCOP20/CMP10議長は、議長就任スピーチにおいて、「ペルー政府と国民を代表して、参加者にとって、今回ペルーで過ごす時間が快適かつ実りの多いものとして永遠に記憶されるよう願って、COP20を開会したい」と開会の言葉を述べました。また、「このCOP20に先立って、私達が前進するためのシグナルがいくつかあった」とし、世界の主要な温室効果ガス排出国数か国による排出削減に関する歴史的な合意(筆者注:今年11月の温室効果ガス排出削減目標に関する米中首脳合意を指しています)、今年9月の気候サミット(ニューヨーク)での公的資金の動員と様々なイニシアチブ、緑の気候基金への各国の拠出の表明、今年10月の強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム(ADP)(筆者注:気候変動枠組条約の下、2020年以降、国際社会全体でどのように気候変動対策に取り組んでいくかを2015年末までに合意することを目指して議論する場。今回は、明日2日から始まります)での進捗、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書の公表を挙げました。さらに、「COP20では、各国間の信頼を強化し、国家と国家以外の主体との対話の場を設け、2015年合意に向けて、気候変動対策と持続可能な発展とのバランスのとれた合意案を作ることによって、来年への足固めとしなければならない」と述べて、開会のスピーチを締めくくりました。

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写真3:プルガル・ビダルCOP20/CMP10議長

 クリスティーナ・フィゲレス気候変動枠組条約事務局長は、ペルーのナスカの地上絵(筆者注:広大な大平原の地表面に描かれた幾何学図形や動植物の絵)を引き合いに出して、「私達は、ナスカの地上絵を完全に理解することはできないが、そこからインスピレーションを得ることはできる」とし、「その尾がペルーのシンボルになっている、ナスカの地上絵の猿は賢く機知に富んでいて、目標を達成するために創造的に作業に取り組もうと私達に思わせてくれる。ハチドリは機敏で敏捷性が高く、新しい考え方や共通項を素早く探そうと私達に思わせてくれる。高く舞い上がるコンドルは、野心的な目標を達成しようと私達に思わせてくれる」と述べました。フィゲレス条約事務局長は、開会セレモニーの時、ナスカの地上絵をデザインした服を着ていました。そして、「ここリマで、私達は重要な行動のラインを描かなければならない」として、4点挙げました。第1に、来年の合意に向けて、新しくかつ普遍的な気候変動に関する合意の文案を作ること、第2に、適応に関する進捗を統合すること、第3に、特に最も脆弱な人々に対する、資金支援の強化をはかること、第4に、すべてのステークホルダーの気候変動対策をスケールアップすること。さらに、「COP20は、歴史を刻まなければならない。私達は、ナスカの地上絵のように、時間が経つにつれて必然となる気候変動対策の行動の絵を描かなければならない」としました。

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写真4:開会スピーチを行うフィゲレス気候変動枠組条約事務局長

 ペルーのオランタ・フマラ大統領もビデオメッセージを寄せ、「今は、気候変動対策をとることによって、正しい道に戻るべき時だ」と述べました。

 IPCCのラジェンドラ・パチャウリ議長は、今年11月に公表されたIPCC第5次評価報告書統合報告書の重要なポイントを紹介しました。パチャウリ議長は、重要なメッセージとして、3点挙げました。第1に、気候システムへの人為的影響は明確であること、第2に、私達が気候をおかしくすれば(disrupt)するほど、私達はより深刻で、広範な、かつ、不可逆な気候変動影響を受けることになること、そして、第3に、私達は、気候変動を抑制し、より繁栄し(prosperous)、持続可能な未来を構築する手段を持っていること。

 その後、各交渉グループが今回の会議にどのような成果を期待しているかについての発言がありました。

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写真5:COP20に何を期待するかについて発言するG77+中国(交渉グループのひとつ。途上国全体をとりまとめるグループ)の代表

 今日から2週間、ここリマでは、今後、国際社会が温暖化問題にどのように取り組んでいくかについての議論が行われます。会場の雰囲気はどのようなものなのか、交渉はどれくらい進んでいるのか、なぜある論点が問題となっているのかなどを、現地から皆さんにお伝えしていきます。

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写真6:ラルコ・マールから見た夕日

参考資料:

文・写真(写真2、4を除く):久保田 泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)


※全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)ウェブサイトより転載