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2011年12月7日

交渉も大詰めに:細野環境大臣の演説、両特別作業部会の進捗状況

 会期も残り少なくなってきました。今日(12月7日)は、終日、閣僚級会合が開催されました。また、同じく午 前中には、条約特別作業部会 (AWG-LCA)の統合文書の改訂版が公表され、コンタクトグループ(オブザーバーが傍聴可能な小グループ会合)が開催されました。午後には、議定書特 別作業部会(AWG-KP)のコンタクトグループが開催されました。今日は、これらの会合の概要をお伝えします。

 昨日に引き続き、閣僚級会合が開催されました。午前のセッションで、細野豪志環境大臣が演説を行いました(写真1)。

写真1 閣僚級会合で演説を行う細野環境大臣

 細野大臣は、冒頭で、3月の東日本大震災及び原発事故に触れ、各国からの支援に対して謝意を表しました。日本国民は、このような国難にあっても、 温暖化問題に積極的に取り組み、世界に貢献する意欲を失っていないとしました。地球規模での行動が緊急に必要であるとして、世界の平均気温上昇を2℃にと どめることを認識し、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも半減させることを国際社会共通の長期目標とすべきであると強調しました。この目標を実現するためには、すべての主要国が参加する、公平かつ実効性のある新たな法的枠組みが必要であると述べました。そして、①カンクン合意の 実施、②新たな作業部会の設立、③京都議定書第1約束期間後、新たな枠組みができるまでの間、各国が着実に削減努力を進めること、の3点をダーバン会合の 成果とすべきであるとしました。そして、京都議定書の意義を評価し、第1約束期間の目標の達成に邁進するとしましたが、第2約束期間については、将来の包括的な枠組みの構築に資することがないため、これに加わらない意向を改めて表明しました。ただし、カンクン合意の実施や将来の枠組みの構築にあたり、議定書の下で発展してきたルールやメカニズムを活用することも重要であると述べました。

 細野環境大臣の順番の5つほど前に、カナダのケント 環境大臣が演説を行いました。カナダは、かねてから京都議定書第2約束期間の設定に反対の姿勢を明確にしていましたが、第1約束期間中の脱退も検討してい るとの報道がダーバン会合開会直後に出ました。このこともあり、今回は、化石賞を連日受賞しています。ケント環境大臣は、演説の中で、改めて第2約束期間 の設定に反対し、カンクン合意を基盤とした包括的な国際レベルの温暖化対策の枠組みの構築の必要性を訴えました。また、「カナダにとって、京都議定書は過去のものである」などと発言し、場内からブーイングが起こりました。

 同じく今日の午前中、AWG-LCAのコンタクトグループが開催さ れ、リーフシュナイダーAWG-LCA議長は、統合文書の改訂版(写真2)を提示しました。共有ビジョン(長期目標など)や合意の法形式など、事務レベル の交渉が膠着状態にあるために閣僚級協議からのインプットを必要とする事項がたくさんあるようです。これらについて、バランスのとれた合意ができるかを心 配している国に対して、リーフシュナイダー議長は、閣僚級協議ではパッケージとして包括的に議論するので、心配する必要はないと述べました。

写真2 AWG-LCAの統合文書の改訂版。138ページもあります。

 夕方には、AWG-KPのコンタクトグループが開催されました。テーマ別の小グループ会合(数値目標、森林吸収源、市場メカニズム等)の進捗状況 が報告され、これに対し、各交渉グループの代表が意見を述べました。こちらも多くのグループで交渉が膠着状態にあり、政治決定が必要とされているようです。

 さらに、各国首脳/閣僚が演説を行うCOP/CMPの閣僚級会合と並行して、閣僚級による議論の場・Indaba(南アフリカの先住 民が重要な問題を議論するために集う議会の意)が設けられ、交渉が行われています。また、テーマ 別の小グループ会合は、非公式のままずっと続けられています。果たして、会期終了までに合意はできるのでしょうか。

 今日は、オブザーバーが傍聴できる会合が少なく、間もあいていたので、空き時間 に敷地内を散歩してみました。敷地内には、外見がユニークな展示がいくつもあるのですが、詳しい説明がないものが多く、記事にすることができなくて残念です。そのうちのひとつをご覧に入れたいと思います。

写真3 人と技術と自然が力を合わせれば、温暖化問題の解決につながる、と言いたいようです。

 今日は、おみやげ屋さんが出ていました。きれいなビーズ細工などがたくさん並んでいました。

写真4 会場敷地内のおみやげ屋さん

参考資料

執筆:久保田 泉
(国立環境研究所 社会環境システム研究センター)

※全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)ウェブサイトより転載