オゾン層破壊の防止策 1974年にフロンによるオゾン層破壊の可能性が指摘された後、日本を含め先進国は、生産能力の凍結や使用の段階的禁止などの処置をとりました。そして、国際的な議論が活発になり、80年代後半には、国際条約や議定書が定められ、多くの国が締約しました。
 

 

タイトル(オゾン層保護のためのウィーン条約)

1985年3月22日、オゾン層保護を目的とした国際協力ための基本的な枠組みを設定する「オゾン層保護のためのウィーン条約」が採択されました。締約国数は172カ国とEC(欧州共同体)です。

その概要は、「オゾン層の変化により生ずる悪影響から人の健康および環境を保護するために適当な措置をとること」、「研究および組織的観測などに協力すること」、「法律、科学、技術などに関する情報を交換する」などです。

 
タイトル(オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書)

1987年9月16日、上記のウィーン条約の下、オゾン層を破壊するおそれのある物質を特定し、その生産と消費と貿易を規制して、人の健康および環境を保護する 「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択されました。締約国は171カ国とECです。

その概要は、「オゾン層破壊物質の規制スケジュール」、「非締約国との貿易規制」、「最新の科学、環境、技術および経済に関する情報に基づく規制措置の評価および再検討」などです。条約および議定書の事務局は、ナイロビの国連環境計画(UNEP)に置かれています。

規制強化の推移一覧
モントリオール
議定書の改定
による規制強化
の推移
タイトル(モントリオール議定書下での規制措置の強化)

モントリオール議定書の採択後、締約国の間でオゾンの破壊状況と規制措置について、さらに検討が続けられてきました。オゾン層の破壊が予想以上に進んでいることから、以下の締約国会合で、規制物質の追加や規制スケジュールの前倒しなど、モントリオール議定書の改定が行われました。

(1)1990年6月  第2回締約国会合(ロンドン会合)
(2)1992年11月  第4回締約国会合(コペンハーゲン会合)
(3)1995年12月  第7回締約国会合(ウィーン会合)
(4)1997年9月  第8回締約国会合(モントリオール会合)
(5)1999年12月  第11回締約国会合(北京会合)
(6)2000年12月  第12回締約国会合(ブルキナファソ・ワガドゥグ会合)
(7)2001年11月  第13回締約国会合(コロンボ会合)
(8)2002年11月  第14回締約国会合(ローマ会合)

タイトル(日本のフロン生産の規制状況)

モントリオール議定書の採択を受け、日本では1988年に「特定物質の規制などによるオゾン層の保護に関する法律(オゾン保護法)」が制定され、89年からフロンの生産規制が始まりました。91年、94年のオゾン保護法の一部改正を経て、93年末にはハロンの、95年末にはCFC、1,1,1−トリクロロエタンなどの生産が全廃されました。今後は、95年から生産規制された臭化メチル、96年から生産規制されたHCFCなどの生産・消費の削減と、フロンの代替物質代替技術のさらなる開発が必要です。

タイトル(日本のフロン回収・破壊の状況)

過去に生産され、冷蔵庫やクーラーの冷媒などとして、家庭やオフィスや工場などに出回っているフロンの回収・破壊に関しても、1990年代の後半には手引きやプログラムがつくられました。そして、98年公布の「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」では、家庭用冷蔵庫およびエアコンからの冷媒フロン回収を義務づけました。

また、2001年公布の「特定製品に係るフロン類の回収および破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法)」では、業務用冷凍空調器とカーエアコンに使用されている冷媒フロンを大気中にみだりに放出することを禁止し、機器の廃棄時における冷媒フロンの回収と破壊を義務づけました。

タイトル(詳細解説)
解説(オゾン層保護のためのウィーン条約)

オゾン層の保護のためのウィーン条約は、「オゾン層の変化により生ずる悪影響から人間の健康および環境を保護する」決意から生まれたものである。条約の第2条には、締約国は、自国の人間活動によってオゾン層を変化させるおそれがあり、その変化によって人の健康や生態系に悪影響が生じたり、生じるおそれがある場合には、そのような人間活動を規制したり防止するため、適当な立法措置や行政措置を講じたり、政策の調整に協力すべきことがうたわれている。この条約を実施するために合意された措置として、モントリオール議定書が採択されたのである。

*以上は「フロン−地球を蝕む物質―」
(富永健・巻出義紘・F.S.ローランド著/東京大学出版会)のP108より

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解説(オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書)

モントリオール議定書は、ウィーン条約に基づいて、科学的知見の発展をふまえ、技術・経済的考慮をはらいながら、オゾン層破壊物質の放出をなくすことが最終目標であり、それらの物質の世界の放出量を規制する予防措置によって、オゾン層の保護をはかるものである。ウィーン条約が、オゾン層保護のための総則とすれば、モントリオール議定書は、フロン規制のためのいわば各論(細則)にあたるものである。

議定書の第1条には、規制対象物質としてフロン11、フロン12、フロン113、フロン114、およびフロン115の5種類のフロン(「特定フロン」とよぶ)およびハロン1211、ハロン1301、ハロン2402の3種類のハロンを示している。また、規制は、これら物質そのままの量ではなく、その生産量などに、物質ごとに一定の「オゾン破壊係数」をかけて得た量(算定値)について行われることになる。

*以上は「フロン−地球を蝕む物質―」(富永健・巻出義紘・F.S.ローランド著/東京大学出版会)のP108−P109 より

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解説(ハロン)

臭素(Br)の入っているフロンのことをハロンといいます。ハロンには優れた消火能力があり、対象物を汚染しないという特徴があるため、消火剤として使用されてきました。臭素のオゾンを破壊する能力は塩素の40倍から50倍にもなります。

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解説(臭化メチル)

臭素の入った化合物(CH3Br)で、殺菌・殺虫作用があり、畑の土壌燻蒸剤や穀物の燻蒸剤として、また輸出入時の殺菌・殺虫剤として、広く使われてきました。オゾン破壊能力が高いので、モントリオール議定書の1997年モントリオール会合で、先進国においては2004年末での全廃が定められました。

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解説(代替フロン)

代替フロンとしては、フロンと似た性質をもち、かつオゾン層を破壊しない物質が望ましいことになります。その一つとして、塩素原子のかわりに水素原子を含むものが開発されています。これには2種類あります。塩素原子を一部残す「ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)」と、塩素原子をまったく含まない「ハイドロフルオロカーボン(HFC)」で、第2世代の代替フロンとよばれています。

水素を含むフロンは分解されやすく、対流圏内で次々に分解されるので、塩素を含むHCFCでも、塩素原子が成層圏のオゾン層まで届く確率は低く、オゾン層を破壊する力は小さくなり、規制対象となっているフロンの1/10〜1/100です。しかし、オゾン層を破壊しないわけではないので、モントリオール議定書締約国による1995年ウィーン会合において、先進国では2019年末で全廃することが定められました。

塩素をまったく含まないHFCはオゾン層を破壊しません。しかしながら、温室効果能力が高く、これも大きな問題となっています。そのため、現在、より環境負荷の低い代替フロンの開発が始まっています。一つは温室効果の小さいHFCの開発であり、もう一つは酸素原子(O)や窒素原子(N)を含んだ新しいタイプの代替フロンの開発です。

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解説(フロン代替技術)

フロンとはまったく別の種類の物質を使った冷媒や発泡剤、洗浄剤の開発も進められています。例えば、アンモニアを冷媒とする大型業務用冷蔵庫は昔も今も使われていますが、アンモニアには毒性や可燃性があり、家庭用冷蔵庫への使用には問題があります。そこで、プロパンやブタンなどの炭化水素を冷媒とするものが研究開発されています。炭化水素は可燃性ですが、家庭用冷蔵庫では充填量も少ないので、問題はないと考えられており、すでに欧州では、炭化水素を使う家庭用冷蔵庫がかなり普及しています。日本のメーカーも2002年から生産・販売を開始しています。炭化水素のエアコンへの導入についても研究開発が進められており、ドイツでは販売が開始されています。また、不燃性の二酸化炭素は理想的な冷媒ですが、外気温が高い環境では冷媒作用を示しません。しかし、カーエアコンなどに利用しようという研究機運が高まっています。

一方、冷媒を使わない冷凍システムの研究開発も行われています。水素吸着合金の「水素を吸収すると熱を放出し、水素を放出すると熱を吸収する」という性質を利用したMH冷凍システムもその一つです。また、電子素子を使うシステムもあります。「2種の金属の接合部に電気を流すと、一方の金属からもう一方の金属に熱が移動する」というペルチェ効果を利用したシステムで、静かなので、コンピュータのプロセッサの冷却や、ホテルや病院の小型冷蔵庫、ワイン専用の冷蔵庫などにすでに使われています。

発泡剤については炭化水素や二酸化炭素、水への転換が一部実用化していますし、噴射剤については特殊な用途を除いて炭化水素(液化天然ガス:LPG)に転換されています。洗浄剤については、水などに転換されています。

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