フロンによるオゾン層の破壊 オゾン層が、冷蔵庫やクーラーの冷媒、プリント基板の洗浄剤、スプレーの噴射剤などに使われていたフロンによって破壊され、生体に影響を及ぼす可能性が指摘されてたのは1974年のことです(オゾン層破壊の発見)。また、1984〜86年にかけて、南極上空でオゾンホールが確認されました。オゾンはフロンによって、どのように破壊されるのでしょうか。
  オゾンの破壊のしくみ説明図
オゾンの破壊の
しくみ
タイトル(破壊のしくみ1上部成層圏)  
 

フロンは安定な物質で対流圏では分解されません。しかし、成層圏にまで達すると、強い紫外線によって分解され、塩素原子(Cl)を放出します。塩素原子は触媒となって、オゾン(O3)と酸素原子(O)が反応して、2個の酸素分子(O2)となる反応サイクルを進めます。上部成層圏には塩素原子も酸素原子も多いので、この反応サイクルがどんどん回り、オゾンが壊されていきます。

しかしながら、塩素原子もやがてはオゾンを破壊しない物質にかわっていきます。成層圏には、メタン(CH4)や二酸化窒素(NO2)などの物質があり、塩素原子はこれらの物質と結合して不活性な物質(貯留物質:reservoir)になります。そのため中緯度地方の上部成層圏では、南極のオゾンホールのような急激な破壊が食い止められています。

 
塩素原子から不活性物質への化学反応式
塩素原子から
不活性物質への
変化
 
  オゾンホール生成解説図
オゾンホールの
生成モデル
タイトル(破壊のしくみ2下部成層圏)  
  タイトル(南極域)  

南半球の春季(9〜11月)に、南極域の高度10〜25kmの成層圏オゾンの量が、南極大陸がすっぽり入ってしまうくらいの穴状の範囲で、極端に少なくなる現象を、「オゾンホール」といいます。

オゾンホールの原因は南極域の成層圏にできる雲と極渦(ジェット気流の一種で、渦状に極域成層圏を取り巻いている)です。中緯度地方で雲ができるのは対流圏ですが、南極域の冬は非常に寒く、−78℃以下になると成層圏でも雲(極域成層圏雲:PSC)ができます。この雲の表面が化学反応の場となり、不活性な貯留物質に取り込まれていた塩素原子が、再び塩素分子(Cl2)などの不安定な成分になります。そして春先に日光が当たると、塩素原子となり、オゾン破壊の反応をどんどん進めます。さらに極渦が、中緯度地方のオゾンの多い空気との混合を妨げます。その結果、高度17km付近のオゾンはほとんどなくなってしまいます。

塩素原子を不活性な物質にかえる二酸化窒素(NO2)などが雲の粒子に取り込まれてしまっているので、暖かくなって極域成層雲が消えるまでオゾン破壊は続きます。

 
タイトル(北極域)

北極域でも南極域と同じように極域成層圏雲ができます。しかし、寒さが南極域ほど続かないので、極域成層圏雲も南極域のようには長持ちしません。北半球は南半球に比べて、海や陸や大きな山岳の分布が東西方向に不均一で、対流圏から成層圏に波動状の気流のうねりが伝わり、極渦内外の空気が混じり合ったり、低緯度から極域へと熱を運ぶしくみができたりするためです。

1980年代を通して、北極域では、南極域のオゾンホールほどの大規模なオゾン破壊は観測されませんでした。しかし、90年代に入ると冬の成層圏が異常に低温になるという現象が続き、春季のオゾン全量が急速に低下し、97年には「北極オゾンホール」といえるほどの状況になりました。そして2000年1月初めから3月終わりまでの3カ月の間に、高度18km付近で70%以上のオゾンが破壊されていたことが報告されています。これは、北極域の特定高度オゾン破壊としては過去最高の値です。

タイトル(中緯度地方)

南極のオゾンホールは極域成層圏雲が化学反応の場になるためですが、雲粒子の核となっている硫酸エアロゾルは中緯度地方の下部成層圏にも存在します。そして、硫酸エアロゾルの表面が化学反応の場になり、不活性な貯留物質に取り込まれていた塩素原子を、再び活性化することが確かめられています。

1991年のピナツボ火山(フィリピン)の噴火によって成層圏の硫酸エアロゾルの量が大幅に増加しましたが、北半球では92年と93年に記録的なオゾン破壊が観測されました。

 
タイトル(極域と中緯度地方のオゾン層破壊の関係)

南極、北極、中緯度のオゾン層破壊の状況はたがいに影響を及ぼしあっています。南極のオゾンホールは、暖かくなって極域成層雲が消えると消滅しますが、このときオゾンの少なくなった空気が南半球の中緯度地方に運ばれます。

また、北極域の極域成層雲によって生じたオゾン破壊の進んだ空気も、北半球中緯度地方にまで運ばれることがあります。1996年4月、1997年5月、2001年2月には、日本も北極域のオゾン層破壊の影響を受けていたことが、国立環境研究所および名古屋大学によって観測されています。

タイトル(詳細解説)
解説(フロン) フロンの種類と用途一覧表
フロンの種類と
用途

正式にはフルオロカーボンといいます。メタンやエタンの水素原子が、フッ素原子(F)や塩素原子(Cl)で置きかわった化合物の総称で、いろいろな種類があります。1930年に米国で開発・販売された冷媒がその始まりです。圧力をかけると簡単に液化し、毒性がなく、不燃性であることから、「夢のガス」とよばれ、冷媒、洗浄剤、発泡剤、噴射剤、消火剤として幅広く用いられてきました。

>>戻る

解説(オゾン層破壊の発見)

1974年、米国カリフォルニア大学のローランドとモリーナ(現マサチューセッツ工科大学)が、上部成層圏(高度約40km)でのフロンによるオゾン破壊の可能性を、初めて指摘しました。

>>戻る

 
解説(オゾンホールの確認)

1984年に、日本の忠鉢が、春季における南極域の成層圏オゾン異常減少について報告しました。1985年には、英国のファーマンらが、春季の南極のオゾン量が年々減少していることを報告しました。1986年に、米国のストラルスキーらが、春季の南極では、オゾン量の少ない領域が穴状になっていることを報告しました。これらの発見により、南極オゾンホールの存在が確認されました。

>>戻る

解説(硫酸エアロゾル)

エアロゾルとは、大気中に浮遊している固体あるいは液体の微粒子のことをいいます。硫酸エアロゾルは、火山ガスなどに含まれている二酸化イオウなどが、成層圏で硫酸に化学変化し、さらに水分を取り込んで生じます。

>>戻る

 
 

破壊しくみ1上部成層圏 破壊のしくみ2下部成層圏 オゾン層の破壊トップページに戻ります 「国立環境研究所ホームページ」に戻ります