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2009年4月1日

温暖化が引きおこす異常な現象

 温暖化と異常気象の因果関係ははっきりしていませんが、温暖化によって異常気象が増えているといわれます。さらに、地球の気候システムまで変えてしまうような現象が発生する危険性もあります。進行している温暖化の影響を軽減することができるのでしょうか。

異常気象が増える?

 ここ数年、世界各地で熱波、豪雨、洪水、ハリケーンなどの異常気象が頻発しています。個々の異常気象と温暖化との関係はまだはっきりわかっていませんが、2007年に公表されたIPCCの第4次評価報告書では、温暖化すると熱波や豪雨が増え、台風・ハリケーンなどが強力になると予測しています。

 2003年にヨーロッパを襲った熱波(第1部1「地球温暖化のきざしは?」“2003年の欧州の熱波”参照)では、フランスで1万5000人が命を落としました。2004年の日本では、熱波、集中豪雨、台風の上陸数が10個という異常気象に見舞われました。台風の上陸数は平均して年に2、3個ですから、記録的な多さです。このため、各地で被害が発生し、交通の麻痺や停電など市民生活にも影響が出ました。2005年にはアメリカで強力なハリケーンが発生し、ニューオリンズ市の大半が浸水するなど、大きな被害をもたらしました。

思いもよらない現象が発生?

海洋大循環の停止
海洋大循環の停止

 温暖化は、地球の気候システムそのものを変えてしまうような大規模は変化まで引きおこす可能性があります。これは、「思いもよらない現象(Surpriseサプライズ)」とか、「突然の変化(Abrupt change)」と呼ばれるもので、これまでの科学的な知識では予測できないものです。

 たとえば、海洋大循環の停止です。海洋大循環というのは、温度差と塩分濃度の差で駆動される地球規模の海水の流れで、1000年かけて世界の海を1巡回しています。この海洋大循環のおかげで、地球の気候は安定しているのですが、極域での塩分濃度減少や水温上昇にともなってこの循環が停止した場合、海流による低緯度地域から高緯度地域への熱の輸送が行われなくなり、世界各地の気候は大きく異なったものとなることが予想されています。

 そのほか、森林が枯れて、そこに蓄積されてきた二酸化炭素が急激に放出され、温暖化をさらに加速させるとか、極域の陸地上の氷が急激に融解して海面が上昇するといった、甚大な被害を及ぼすような現象が考えられます。このような現象が21世紀中に発生する確率はきわめて小さいと見積もられています。しかし、速いスピードで温暖化が続くとすれば、そのリスクは高まるでしょうし、現在よりも温暖化が進む22世紀以降には、さらにそのリスクが高くなるはずです。

温暖化の影響は軽減することができますか

温暖化に対する適応策
温暖化に対する適応策
熱波対策
熱波対策

 温暖化への対策には、温室効果ガス排出を減らす緩和策と、温暖化に合わせた生活をしていこうという適応策があります。温暖化を防止するには緩和策をとることが第一ですが、そのためには膨大な費用がかかるほか、急には対応できないため、容易に対応できないのが現状であり、効果が現れるまで時間もかかります。そこで、気温の上昇に合わせて対策を講じる対症療法的な適応策や、温暖化による影響を軽減するための対策をあらかじめ立てておくことが考えられます。生物は自身が適応能力をもっていますが、温暖化の進行を生物は予想することはできませんから、温暖化の影響を低減するためには、人間の助けが必要になるでしょう。左の表に温暖化に対する適応策の事例を示しました。

 たとえば、海面上昇に対する適応策には、防護、順応、撤退の3つの方法があります。防護は、堤防を築いたり、かさ上げして住宅やインフラを守る方法です。順応は、しだいに高くなる海水面に対して床を上げたり、高床式の住宅をつくるなどの工夫です。撤退は、海水面の上昇によって浸水する前に、住宅や施設を後方へ移動させる方法です。

 熱波に襲われたヨーロッパでは、適応策を強化するため、左の図に示したような熱波対策を世界保健機関(WHO)が奨励しています。

 適応策は、穀物生産や気温の影響を受ける産業では、普通に取り入れられていることです。たとえば、夏の気温が1℃上がるだけで清涼飲料水などの販売が伸びるので、過去のデータから気温と販売量の関係を見いだし、気温の予測によって生産量を変えるといった計画がそれにあたります。