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 地球温暖化影響は、人間社会よりも動植物にまず現れます。動植物の生息域が高緯度方向や高地へ移動するのにともなって、生態系にどんな変化が出てくるのでしょうか。その代表的な事例を紹介しましょう。

世界の植生分布が変化

 陸上の植物は、温暖化の影響をどのように受けるのでしょうか。南限や北限といった成長限界が高緯度方向に、高山・山岳地帯ではより高い場所に移動するため、植生の種構成が変化すると予測されます。

 温暖化にうまく適応できる植物もあるでしょうが、ほとんどは温暖化に追いつくことができません。森林を構成する樹木の移動速度は4~200km/100年のオーダーであるのに対して、温暖化はもっと速い速度で進むと見積もられているからです。

 在来種が適応できない地域では、より適応力のある植生に取ってかわられ、たとえば外来種の進入といった影響が予測されます。

日本の森はどうなるのでしょうか

日本の植生分布の変化
日本の植生分布の変化

 日本は南北約2000kmに長く伸びた列島です。そのため、北の亜寒帯から南の亜熱帯に至る多様な気候帯をもち、森林植生も北の針葉樹林帯(エゾマツ、シラビソなど)から南の亜熱帯林(ヤシ、タコノキなど)まで、多様性に富んでいるのが特徴です。

 平均気温が3~4℃上昇したとき、日本の森林はどう変化するでしょうか?それを示したのが左の図です。わが国に広く分布するブナ林(落葉広葉樹林)は冷温帯の代表的な森林です。保水力が高く、大型動物の住みかでもあり、最も豊かな自然生態系をつくっています。約4℃気温が上昇すると、このブナ林の約90%が消失すると予測されています。また、現在の日本の森林は人工林が40%以上になっています。温暖化すると、スギやヒノキの造林地の環境がブナ帯からシイ・カシ帯(常緑広葉樹林)に移り、造林地で競争する樹種が常緑樹に変わると予測されています。

日本の生態系に現れてきた大きな変化

日本の生態系に現れている温暖化の影響
日本の生態系に現れている温暖化の影響
アポイ岳のヒダカソウ
アポイ岳のヒダカソウ

 近年、森に住むニホンジカ、ニホンザル、イノシシなどの大型哺乳動物の生息分布域が拡大しています。これは、温暖化によって積雪量が減少したり降雪期間が短くなり、野生動物の生存率が高くなったことも一因と考えられています。一方で、野生動物による作物被害が多発するようになり、人間社会との摩擦も増えてきました。

 日本の生態系に現れているさまざまな変化を、左の表にまとめてみました。

 また、高山植物への影響を示すものとして、北海道のアポイ岳に咲く希少種ヒダカソウの減少を紹介します。ヒダカソウの生息地の山麓側にはハイマツが生えていますが、温暖化の進行にともなうハイマツの上昇が観察されています。このままでは、30年後にはヒダカソウが消滅する可能性もあります。

水生生態系への影響は?

 湖沼や河川などの水生生態系については、高緯度地域で温暖化の影響が大きくなります。気温と水温の上昇にともなって、生物の成長が促進され、生産性は増大、冷水種の生息範囲が拡大します。しかし、寒水種-冷水種の成育限界では、気温が上昇するために種の消失が増えると予測されます。たとえば、北海道の山岳地帯に分布するオショロコマ (サケ科) は、水温が1℃上昇すると生存率が72.4%に、4℃では10.4% に落ちてしまいます。

 また、温暖化によって降水量が変化すると、河川流量や湖沼水位の変動が大きくなります。大規模な洪水や渇水の発生状況(頻度と継続期間)の変化は、水質の悪化を招き、生物の生産性を低下させ、河川の水中生息域を狭めてしまいます。霞ヶ浦での気象と水質モニタリング調査によると、水温が1℃上昇するとCOD(chemical oxygen demand、化学的酸素要求量) は約1ppm上昇すると推定されています。

詳細解説

  • COD(化学的酸素要求量)
    強力な酸化剤である過マンガン酸カリウムや重クロム酸カリウムを用いて、試料の水を処理したときに消費される酸化剤の量を、それに対応する酸素の量に換算した値で、水中に含まれる酸化される物質の量を示します。酸化される物質の主要なものは有機物なので、CODは有機物量の尺度とされています。わが国では過マンガン酸カリウムによるCODが採用されています。