見えてきた温暖化の影響
    温暖化の影響かどうかを科学的に評価する  
   

温暖化の影響が現れていることを科学的にどのように明らかにするかは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が第3次評価報告書の検討をはじめた1998年ごろから問題となっていました。

山岳の氷河が後退したり、北極海の海氷が薄くなったりしていることは、自然の中での現象であり、また衛星による観測データも使えるので、温暖化の影響が出ているかどうか比較的容易に判定することができます。しかし、人間が住んでいる地域や、活動している地域では、たとえば植物に温暖化の影響が出ているかどうかを確認するのは難しいのです。そのような場所では人間活動の影響も同時に受けていて、気候が変化したための影響か人間活動の影響なのか、はっきり区別できないからです。

そこでIPCCでは、気候変化にとくに敏感な雪氷や自然生態系についての研究論文をできるかぎり集め、それらを詳しく調べることから始めました。集められた論文数は2500編以上。それらを、地域の気温変化との関係を扱っていること、観測期間が長い事例(20年以上)、という2点を基準にして絞り込み、最終的に約50の研究について詳細に検討しました。その結果、温暖化すると当然生じると予想される現象とは逆の現象を示す例も少数ありましたが、大半は温暖化による現象であることが、統計的な方法によって確認されたのです。

その後、IPCCの第4次評価報告書(2007年)でも、577の研究から選ばれた約29,000件のデータに基づき、全ての大陸とほとんどの海洋において多くの自然環境が地域的な気候変化、特に気温上昇により、影響を受けていることが確認されました。

 
     
  温暖化の影響が確認された地点
温暖化の影響が
確認された地点
温暖化によってどんな現象が現れているのでしょう  
 

 現在、すでに現れている温暖化の影響としては、次のような現象があげられています。

 ・氷河の縮小と、永久凍土の融解
 ・河川や湖沼の結氷期間が短くなる
 ・中・高緯度地域の植物の生長期間が延びる
 ・動植物の生存域が極方向、高地へ移動している
 ・動植物種の生育数が減少
 ・開花、昆虫の出現、鳥の産卵の時期が早まる

 
 

このような温暖化の影響が確認された地点を地図上で見てみましょう。ヨーロッパ、北アメリカに多く、アフリカ、アジア、南アメリカにはほとんど事例がありません。これらの地域では、温暖化の影響が出ていないというのではなく、科学的に判断できるだけの論文が出ていなかったにすぎません。

日本に事例がないのは、英語の論文として科学者の目に留まらなかったということです。実際には、気象庁によって1953年以降、約50年間に及ぶ貴重な生物季節のデータが蓄積されています。今日、このデータは温暖化が進んできたことを知るために非常に貴重なものとなっています。

ごく最近の例としては、北極の海氷やヒマラヤなどの山岳氷河が融けていることが報告されています。また、北極協議会(ACIA)が2004年11月に公表した北極圏気候影響アセスメント報告書によると、過去50年間にアラスカとカナダ西部で、3〜4℃の気温上昇、氷河や海氷の融解、永久凍土の融解、積雪期間の短縮などが観測されています。とくに北極の氷は速い速度で融けていて、過去30年間で氷の厚さは半分に、面積は10%減少したことが明らかにされています。(第1部1「地球温暖化のきざしは?」 “北極海の氷の変化”参照)このまま温暖化が続くと、北極の氷が融けて、イヌイットなどの周辺の住民や生態系に深刻な影響が現れると危惧されています。

 
   
温暖化の影響の全体像(日本への影響)
温暖化の影響の
全体像
(日本への影響)
日本でも温暖化の影響が出ていますか

今後も温暖化が進むと、世界中で影響が出てきます。とくに熱帯・亜熱帯域にある途上国での影響は深刻なものになるでしょう。現在でも大気汚染や水質汚濁などの環境問題に悩むこれらの国々では、温暖化が追い討ちをかけてしまうおそれがあります。

日本でも、高山植物の生息域が縮小したり、南方系の昆虫(チョウやクモ)が北方へ移動するといった現象が観測されています。また生物季節のデータから、サクラの開花や満開時期が全国的に早まっていること、紅葉などが遅くなっていることが確認されています。2002年の春には、全国的にサクラの開花が10日から2週間早まり、地域の春のイベントが中止になるなど、人々の生活にも温暖化の影響が現れてきています。

詳細解説
生物季節のデータ

生物季節は、季節によって動植物の状態が変化することを表し、たとえば花の開花した日(開花日)、満開になった日(満開日)、動物の姿を初めて見た日(初見日)などがあります。気象庁は1953年以降、全国102の気象官署で継続して観測を行っています。50年を超える長いデータは世界でも珍しく、貴重なデータとなっています。

   

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