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湖面に発生した
アオコ |
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霞ヶ浦の汚濁がとくに目立つようになったのは、1970年代はじめのことです。1973年夏、養殖コイの大量死が起こり、またアオコが大量に発生。75年には取水していた地域の上水にカビ臭が生じました。水質悪化が心配されるなかで、1982年「霞ヶ浦富栄養化防止基本計画」(茨城県)が公布され、1984年には「湖沼水質保全特別措置法」(「湖沼法」と呼ばれています)ができて、霞ヶ浦も指定湖沼とされました。これにともない「霞ヶ浦に係る湖沼水質保全計画」が策定され、水質改善の数値目標のもとに国レベルおよび県レベルでさまざまの対策が講じられてきました。
湖沼法では、環境基準として次の3項目を定めています。それらはCOD(chemical
oxygen demand、化学的酸素要求量)、TN(total nitrogen、全窒素)、TP(total phosphorus、全リン)です。
CODは水のなかにある有機物の量を示す尺度であり、全窒素は水に含まれるさまざまの窒素化合物中の窒素の量、全リンはリン化合物中のリンの量を表します。これらの数値が高くなると水の汚濁が進んでいると判断されます。数値があがる原因はどんなところにあるのでしょうか。
窒素やリンが河川などから流れ込んで湖の富栄養化が起こると、それを栄養源とする植物プランクトンが増殖し、結果としてCODが増えることになります。TNは生物が分解されて生じるタンパク質、アミノ酸、各種の含窒素有機化合物、工場排水に含まれるアンモニアや硝酸、肥料に含まれる硝酸塩、アンモニウム塩、石灰窒素、尿素などが原因となって上昇します。TPを高くする原因は、肥料や洗剤、工場排水に含まれる表面処理剤などです。
・環境省のホームページ
水・土壌・地盤沈下の保全(水環境部) |
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COD/全窒素/
全リンの経年変化 |
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霞ヶ浦の水のCOD、TN、TPの経年変化を追ってみたのが左のグラフです。
霞ヶ浦とその周辺では、湖沼法にもとづく規制とともに、水質をよくするためのインフラ整備をはじめとして数々の対策がとられました。下水道整備、合併処理浄化槽の設置、底泥浚渫、畜産排水処理施設の建設、紫外線浄化施設の設置、植生浄化施設の設置、アオコ除去船の運行などがおこなわれてきたのです。
これらの対策にもかかわらず、結局、植物プランクトンの量は減少しないままです。3つの水質基準値にはいずれも改善傾向が認められません。特に、近年、TP濃度が顕著に上昇しています。 |
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COD、チッ素、
リンの
1日の
排出負荷量 |
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汚濁物質の発生源に対して種々の対策がとられたにもかかわらず、今なお3つの数値が良くならないのはなぜでしょうか。ことに有機物量の指標であるCODは80年代からやや増加する傾向さえ認められます。
このようなCODの上昇は植物プランクトンだけが原因ではなさそうです。自然に分解することはほとんどなく溶存態(水に溶けた状態)の難分解性有機物が増えていることも原因ではないかと考えられています。難分解性有機物の蓄積や漸増は最近顕在化した新しいタイプの水質汚濁現象です。
難分解性有機物は浄水場における塩素殺菌処理過程で生じる発ガン物質トリハロメタン等の原因物質であるため、健康リスクの上昇が懸念されています。重金属や化学物質と結合してこれらの有害物質を水に溶ける形態にし、能動化させる危険性もあります。
難分解性有機物とはどんなものか、どうして発生するのか、またどんな影響があるのかについて、最近少しずつ研究が進んできました。これらの調査研究によると、下水処理水が難分解性有機物の生成に一役買っていると推察されます。
(参考文献)
「湖沼において増大する難分解性有機物の発生原因と影響評価に関する研究」2001年、国立環境研究所特別研究報告SR-36-2001 |
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下水処理水や農業系排水が難分解性有機物の発生に深く関与しているならば、霞ヶ浦の水質を良くするためには、これらの改善策を講じなければならないことになります。
現在おこなわれている、沈殿による一次処理、活性汚泥(微生物)による二次処理、窒素とリンを除去する三次処理、膜による高度処理に、さらに逆浸透膜処理を加えることで、難分解性有機物や窒素・リンを除去することが技術的には可能です。しかし、その費用が合理的な範囲内であることが実施する条件となります。
農業系排水についてはどんな対策があるでしょうか。食糧生産をおこなう農業においては施肥が不可欠です。肥料には必ず窒素やリンが含まれているうえ、投与した肥料のうち3分の2は利用されずに土壌中に放出されます。すなわち、食糧生産には窒素・リンの放出がどうしてもつきまといます。人口増加にともない、また食糧自給率が高くなるほど、窒素・リンの放出量は必然的に増大します。
かつて農業系排水は土壌と接触して濾過される機会がありました。しかし、インフラ整備が進んだ今日では、排水は透過性のないコンクリート製排水路に入り、そのまま河川から湖に流入します。農業系排水による負荷は、当面改善する手だてを見つけることが困難な状況です。 |
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アオコを形成する代表的ならん藻類がミクロキスティス・エルギノーサです。この群体が水面に大量に浮遊すると青緑色のペンキを流したように見えるのでアオコと呼ばれます。異常増殖して有害な代謝産物ミクロキスチンを出すため、WHOは飲料水の水質ガイドラインとしてミクロキスチンの暫定基準を1リットルあたり1μgと定めています。発生原因は詳しくわかっていません。霞ヶ浦での発生抑制には下水道処理施設の整備が貢献したと推察されています。日本の天然湖沼でのアオコ発生はほぼなくなりました。湖水に溶けた難分解性有機物のうち、フミン物質が増えるとミクロキスティスは生存できなくなることが知られており、霞ヶ浦にアオコがいなくなったことは、この難分解性有機物の増加を示すのかもしれません。
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強力な酸化剤である過マンガン酸カリウムや重クロム酸カリウムを用いて試料の水を処理したときに消費される酸化剤の量を、それに対応する酸素の量に換算した値で、水中に含まれる酸化される物質の量を示します。酸化される物質の主要なものは有機物なので、CODは有機物量の尺度とされています。わが国では過マンガン酸カリウムによるCODが採用されています。しかしながら、過マンガン酸カリウムCODは、酸化剤の濃度、反応温度や時間、有機物の種類などによって値が違ってくることから、CODに替えて再現性の高い溶存有機炭素(DOC、dissolved organic carbon)や全有機炭素(TOC、total organic carbon)を採用すべきだと考える研究者が多くなっています。これらの値は絶対値であり、加算することができるため、物質収支を考えやすいこともその理由です。
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湖水に含まれる窒素とリンの全量を、それぞれ全窒素、全リンと呼びます。湖沼において植物プランクトンが増殖するためには各種の栄養元素を必要としますが、そのなかでも窒素とリンは不足しがちなため、プランクトンが成長するときの制限因子となりやすいのです。植物プランクトンの増減の様子を知るためには、窒素とリンの動態を理解しておく必要があります。湖沼の富栄養化の原因は、湖沼の流域で人間の活動が活発化し、それにともなって流入する窒素とリンの量が増えたことにあります。
TN、TPを測定するには、水の試料を酸化分解してすべての窒素とリンをそれぞれ硝酸性窒素(NO3-N)とオルトリン酸(PO4-P)の形態にした後に、比色法によって測定します。
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溶媒分子は通して溶質分子を通さない半透膜で溶液と純溶媒を仕切ると、通常は半透膜を通って溶媒が溶液側に浸透しますが、溶液側に浸透圧を上回る圧力を与えると、溶媒は逆に溶液側から純溶媒側に移動します。このようにして不要な物質を除去する方法が逆浸透膜処理です。海水の淡水化も逆浸透膜処理によりおこなわれます。
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