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10月

<国際関連情報提供・解説>

亀山 哲(生態系機能評価研究室)

8月にナイロビで開催されたカルタヘナ議定書に関するテーマ別ワークショップと、9月に熊本で開催された陸域景観・海洋景観に関するポスト2020枠組テーマ別ワークショップに関するご報告を亀山哲さんからお送りします。その他、中間審自然環境部会で検討されている自然環境保全基本方針の改定についてなどをお伝えする予定です。

雪氷環境に生きる微細藻類

松崎 令(生物多様性資源保全研究推進室)

ダーウィンの「ビーグル号航海記」には、早春のアンデス山脈において赤い雪をみつけたという記述がある。そのような、融雪期の残雪や氷河が赤や黄色、緑色などに染まったようにみえる現象は世界各地の山岳地域や極域から報告されており、総じて「彩雪」と呼ばれている。彩雪の正体は、雪氷環境に適応した微細な藻類(氷雪藻類)が、雪氷内部の雪融け水の中で高密度に繁殖したブルームである。近年、彩雪が残雪や氷河の融解を促進しているという研究結果が発表され、その原因である氷雪藻類もにわかに注目を集めている。本発表では、演者がこれまでに進めてきた氷雪藻類の種レベルの分類学的研究、および次世代シーケンサーを用いた集団レベルの多様性解析について紹介する。

若手研究員派遣研修成果報告ーアメリカ滞在記

松崎 慎一郎(生物多様性資源保全研究推進室)

2018年8月から2019年8月までの約1年間、若手研究員派遣研修制度を利用して、アメリカのウィスコンシン大学マディソン校陸水学センター(Center for Limnology, University of Wisconsin-Madison)に滞在し研究を行った。湖沼環境研究の視点から、研修先の様子、日常生活、共同研究の成果、アウトリーチ活動について報告するとともに、はじめてのアメリカ生活の様子や感じたことなども紹介したい。


11月

<国際関連情報提供・解説>

角 真耶(センター長室)

今月は、11月25-29日にカナダで開催されるSBSTTA23(第22回生物多様性条約科学技術助言補助機関会合)の議題についてご紹介します。
具体的には、
・GBO5のSPM案(地球規模生物多様性概況第5版(条約事務局が発行する進捗レポート)の政策意思決定者向け要約の案)について
・なぜ愛知ターゲットの進捗にばらつきが出たのかや、条約・議定書・戦略計画2011-2020を実施したことによる学びなど、ポスト2020枠組のためのその他の情報について
・ポスト2020枠組の要素に関する所見
・その他の議題(ポスト2020枠組の支援のための技術的、科学的協力の更新と強化のための提案・生物多様性と気候変動・自然と文化のリンケージなど)
などをご紹介する予定です。

Cascade effects of regulated freshwater discharge on aquatic plants and migratory birds in estuary

KIM, Ji Yoon(気候変動適応センター 気候変動影響観測・監視研究室)

Estuary is one of the most dynamic ecosystems, where several different types of ecosystems create a complex gradient and a unique landscape. Previous studies emphasized the importance of salinity regime in the estuarine system as most biotic gradients well respond to the change of physical environments synchronized with the salinity change. However, during the last decades, natural estuaries have been rapidly modified due to dam construction and reclamation in the coastal area. Construction of an artificial dam changed the natural flow regime of the river and the physical environment. In this presentation, I would like to talk about the response of aquatic plants and migratory birds after the construction of estuarine barrage in the Nakdong River and introduce a restoration case in the Chilika Lake.

NIESの名古屋議定書(ABS)ガイドラインに関する説明会

石田 孝英(センター長室)

遺伝資源を利用する際の国際枠組み(生物多様性条約と名古屋議定書)に対応するために、国立環境研究所ではABS基本方針(2017, 2019改)に続き、ガイドラインを2019年に採択しました。このガイドラインに沿う形で所内の研究に対して具体的な対応が始まっています。所内では、生物学的研究以外でも生物試料が幅広く利用されていることが明らかになったほか、生物試料にアクセスしない伝統的知識の研究など、職員がABS対応の必要性に気づきにくい事例も見られます。本発表ではこれらの事例をガイドラインの内容を交えながら紹介します。プレゼン自体は30~40分程度で、そのあとQ&Aの時間があります。


12月

<国際関連情報提供・解説>

角 真耶(センター長室)

先月に引き続き、SBSTTA23(第23回生物多様性条約科学技術補助助言機関会合)での議論の様子をお伝えすると同時に、前回説明できていない議題についても概要を取り上げる予定です。また、10月31日に開催された「自然公園制度のあり方検討会(第1回)」の様子についても、会議資料が公開されましたので概要に触れたいと思います。その他、SATOYAMAワークショップについての報告も予定しています。

ハムシ類における共生細菌の多様性と進化

福森 香代子(環境ゲノム科学研究推進室)

甲虫目ハムシ科は、世界から37,000種以上が知られる大きな植食性昆虫のグループである。古い組織学的記載により数種のハムシ類において共生細菌の存在が知られていたが、その微生物学的実態は不明であった。本発表では、カメノコハムシ亜科24種について共生細菌を同定し、その多様性および宿主との共進化関係について明らかにした研究を紹介する。また、アオカメノコハムシにおいて明らかにされた共生細菌の生物学的機能についても紹介する。

メタバーコーディングを利用した霞ヶ浦におけるワカサギの食性解析

今藤 夏子(環境ゲノム科学研究推進室)

霞ヶ浦における代表的な漁獲対象種であるワカサギ Hypomesus nipponensis について、本種を含む食物網の構造やその安定性に関わる要因を明らかにすることは、本種を資源として持続的に利用していくために重要である。
そこでまず、特に死亡率の高い稚魚について、その餌生物を特定するため、DNA塩基配列を用いたメタバーコーディング解析により消化管内の餌生物相を調べた。その結果、餌生物としてイサザアミやミジンコ、ワムシなどが検出され、その構成は採集時期(6月と9月)によって変化することなどがわかった。また、湖水中の動物プランクトンについて、形態観察によって得られた個体数とメタバーコーディング解析によって得られた塩基配列数を分類群ごとに時系列で比較したところ、有意に相関していた。これより、DNAの塩基配列数は餌生物の存在量を反映していると考えられた。湖水と消化管内から得られた餌生物の塩基配列数を比較した結果、調査した期間のワカサギは、イサザアミを積極的に捕食するのに対し、ワムシ類は環境中の存在量の割には捕食しないこと、それ以外の餌生物については、環境中の存在量に応じて捕食されていることが示唆された。