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7月

外来種はどこから来るのか?-農業雑草の起源と伝播を例として-

池上 真木彦(生態リスク評価・対策研究室)

外来種は何処からやってくるのだろう?外来種を排出する地域あるいは外来種に侵入されやすい地域というのは存在するのだろうか?またそのような偏りは何に起因しうるのであろう?これらの要因を理解する事は侵略的外来種の発生と分布拡大を考える上で重要な意味を持つと考えられる。
本発表ではこれらの問いに答えるべく、コムギ畑に生育する雑草群集に着目した研究を紹介する。世界各国における外来コムギ雑草の比率を解析した所、コムギ栽培の歴史が短い国ほど外来雑草の比率が高い事、外来雑草はコムギ栽培の歴史が長い地域から短い地域へと流入する傾向がある事が示された。また歴史の長さが同じ程度の地域間ではコムギの栽培条件に近い気候条件を持つ地域ほど在来雑草種の比率が高い、つまりは新たな雑草を生み出す可能性が高い事が示唆された。
これらの結果は外来種の発生と分布拡大には従来の生物地理学的な分布制限要因以上に人間活動が作り出す環境と外来生物が好む環境の親和性が重要である事を示しており、外来種分布拡大予測には対象となる生物種が本当に必要とする生物的な環境を理解する必要がある事を示していると考えられる。

微細緑藻ヘマトコッカスとクロレラの環境ストレス対する応答

大田 修平(生物多様性資源保全研究推進室)

微細藻類は一般に、強光や栄養塩飢餓などの環境ストレスに応答してオイルやカロテノイドといった物質を蓄積する。本発表では、緑藻類ヘマトコッカスとクロレラにおいて強光や栄養塩飢餓ストレスを受けた時の細胞の応答を、透過型電子顕微鏡を利用した3D立体構築解析とゲノムおよびトランスクリプトーム解析によって明らかにした研究を紹介する。藻類細胞がストレスを受けると、オートファジー(自食作用)が誘導され葉緑体やミトコンドリアなどのオルガネラ形態が変化し、カロテノイドやオイルが蓄積されることが明らかになった。

8月

セミナーはお休みです。

9月

ウミガメ・クジラに付くフジツボたちのはなし

林 亮太(日本工営株式会社中央研究所)

『品川の 沖に止まりし せみ鯨 みなみんみんと 飛んでくるなり』(寛政の鯨)
日本初のホエールウォッチングの様子が狂歌で詠まれたように、クジラなどの大型海棲生物は古くから人々の憧れであり興味の対象となってきた。クジラやウミガメ類を代表とするこれらの大型海棲動物には、特異的に付着するフジツボ類、オニフジツボ超科が知られている。演者はこれらのフジツボ類がウミガメやクジラ類の回遊履歴を反映する生きた発信器・データロガーとして使えるのではないかと考え、定置網混獲や産卵上陸個体、ストランディング個体を対象に付着生物調査を続けている。
セミナーでは、アオウミガメに付着するフジツボ類の群集生態学的研究と、オニフジツボ超科の進化生態学的研究を中心にこれまでの成果を紹介する。

日本の自然水域のコイ:その正体と現状

馬渕 浩司(琵琶湖分室)

日本の河川・湖沼に生息するコイには、体高が低く細長いコイと、体高が高く側扁したコイの2タイプが存在するとされてきた。後者は養殖されているコイと同じ体型であることから「飼育型」と呼ばれ、これとは対照的な体型の前者は「野生型」と呼ばれてきた。演者によるこれまでのDNA解析により、「野生型」は日本在来系統、「飼育型」は大陸の養殖系統にほぼ対応することが分かってきた。
本講演では、このような結論に至るまでの研究経過を簡単に紹介し、現在の日本の自然水域に生息するコイの現状について概観する。