四国南西岸の高知県土佐清水市から愛媛県宇和島市にかけての沿岸域は足摺宇和海国立公園に指定されており、南北の水温勾配に沿って優占する生物群集が変化することが特徴の一つである。気候変動に伴う水温上昇により、生物群集や提供される生態系サービスの将来的な変化が想定されることから、国立公園をはじめとする保護区内をモデルケースとして、生態系の利用や保全の実態を把握する必要がある。
本研究では、足摺宇和海国立公園とその北方域を対象域とし、沿岸域で優占する生態系構成種である造礁サンゴと大型海藻類について、潜水調査による分布調査および、これらの生物資源としての利用・保全に関して聞き取り調査や行政文書等の解析を実施した。その結果、造礁サンゴや大型海藻類の分布域と、造礁サンゴ等の観光利用やサンゴの食害生物であるオニヒトデの駆除によるサンゴの保全活動、藻場保全活動が実施されている地域が異なることがあり、生物群集の分布とその利用・保全に空間的なギャップが生じていることが示された。将来的にこのようなギャップが拡大することが懸念されることから、海洋環境や生態系の変化の可能性に合わせて、利用や保全の在り方を事前に検討することが重要である。
写真1:足摺宇和海国立公園内で優占するサンゴ群集
写真2:テーブル状サンゴと大型海藻類
写真3:サンゴの天敵であるオニヒトデ