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シュート動態モデルによる絶滅危惧植物ハマナツメの衰退リスク評価


論文情報
タイトル
Estimation of dieback process caused by herbivory in an endangered root-sprouting shrub species, Paliurus ramosissimus (Lour.) Poir., using a shoot-dynamics matrix model. (シュート動態モデルによる絶滅危惧植物ハマナツメの衰退リスク評価)
著者
Ishihama, F., Fujii, S., Yamamoto, K., Takada, T.
掲載雑誌
Population Ecology (2014), 56(2), 275-288. DOI: 10.1007/s10144-013-0414-1
受理・掲載日
2013/10/8 受理、2013/11/1 オンライン掲載、2014/4 掲載 オンライン公開への外部リンク
概要

長寿命な木本種やクローン成長する草本種では、個体の死亡が観察される頻度がとても低いため、死亡率の推定が困難である。ヨシや竹のようなクローン植物は、“シュート”やラメットと呼ばれる幹の集まりである。シュートが枯れることはしばしばあるので、シュート数の増減に基づいて、個体の衰弱を予測するモデルを開発した。
開発したモデルを、絶滅危惧植物ハマナツメPaliurus ramosissimus (クロウメモドキ科)に適用し、主要な個体群2つにおいて、シカ食害の影響と保全対策の効果の推定を行った。その結果、2つの個体群は、それぞれ 37.8年と37.2年という短期間で、個体あたりのシュート数が8割も減少すると推定され(図)、まだ個体の死亡が観察されていないにも関わらず、早急な保全対策が必要であることが明らかになった。

ハマナツメシカによる萌芽の食害

写真1(左) ハマナツメ。根本から次々と新しい幹を出し(萌芽更新)、株立ち型の樹形となる。
写真2(右)シカによって新しい萌芽が全て食害されている。

 シュート数の変化の推定

図. シュート数の変化の推定結果
個体の死亡はいまのところ観察されていないが、開発したモデルによって、
今後40年以内にシュート数が8割も減少すると推定された。
早急な対策が必要であると考えられる。