長寿命な木本種やクローン成長する草本種では、個体の死亡が観察される頻度がとても低いため、死亡率の推定が困難である。ヨシや竹のようなクローン植物は、“シュート”やラメットと呼ばれる幹の集まりである。シュートが枯れることはしばしばあるので、シュート数の増減に基づいて、個体の衰弱を予測するモデルを開発した。
開発したモデルを、絶滅危惧植物ハマナツメPaliurus ramosissimus (クロウメモドキ科)に適用し、主要な個体群2つにおいて、シカ食害の影響と保全対策の効果の推定を行った。その結果、2つの個体群は、それぞれ 37.8年と37.2年という短期間で、個体あたりのシュート数が8割も減少すると推定され(図)、まだ個体の死亡が観察されていないにも関わらず、早急な保全対策が必要であることが明らかになった。
写真1(左) ハマナツメ。根本から次々と新しい幹を出し(萌芽更新)、株立ち型の樹形となる。
写真2(右)シカによって新しい萌芽が全て食害されている。
図. シュート数の変化の推定結果
個体の死亡はいまのところ観察されていないが、開発したモデルによって、
今後40年以内にシュート数が8割も減少すると推定された。
早急な対策が必要であると考えられる。