このページでは、下記の研究プロジェクトについて紹介しています。

住友財団 環境研究助成
「絶滅危惧淡水魚イトウ(サケ科)の新たなモニタリング手法の開発」
代表: 福島路生(国立環境研究所)
期間: 2012-2013年度
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内容

北海道に生息する絶滅危惧淡水魚イトウの生息状況をモニタリングする手法を開発するプロジェクトです。
高分解能音響ビデオカメラ(DIDSON)を用いて、これまで日照条件や水の透明度に大きく影響される通常のビデオカメラでは記録できなかった、春の融雪増水期の本種の産卵遡上行動を24時間体制で監視する手法を開発します。得られた科学的情報から、産卵遡上の障害となるダムやカルバート、また魚道の管理や改善に役立てると同時に、イトウに対する遊漁(釣り)の自粛時期の提案などを行います。
2012年度から計画を立て、関係機関との調整、機材の確保、機器設置の許認可手続きを終えた後、2013年度の春4月から現地調査を開始しました。5月現在、まだ現地には共同研究者(Dr. Pete Rand)が日々DIDSONデータを取り続けています。今後、データをより詳細に調べ、有益な情報を得るため国立環境研、また東京大学において画像解析を行います。

実施体制

当研究所からは福島路生(生物・生態系環境研究センター)、小熊宏之(計測環境研究センター)らが参画し、JSPS研究員Dr. Pete Rand(米国Wild Salmon Center)、東京大学 生産技術研究所 浅田研究室、(株)東陽テクニカ猿払イトウ保全協議会と連携して実施しています。

対象種イトウについて

イトウは北海道と極東ロシアに生息する大型のサケ科魚類,また日本最大の淡水魚です。日本在来のサケ科魚類では唯一春に産卵する種です。本種の生息域と生息数は近年著しく縮小また減少し,国際自然保護連合(IUCN)は絶滅危惧種(CR),また環境省も絶滅危惧IB類に指定しています。

イトウについては猿払イトウ保全協議会のホームページで詳しく紹介されています。

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イトウ(阿部幹雄 撮影)

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産卵床を掘るメスのイトウ(手前)と見守るオス。
(2013年5月11日, Pete Rand撮影)

2013年春に行ったDIDSON(高分解能音響ビデオカメラ)設置の様子

北海道の春は雪解けの水で河川が増水します。ちょうどその時期にイトウは遡上して河川上流で産卵します。これまで絶滅の危機に瀕するとも言われるイトウの正確な個体数調査は行われたことがありません。そこで、北海道北部の小河川で遡上数をカウントし、その回遊の生態を明らかにするため2箇所にDIDSONを設置しました。

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DIDSON2周波音響カメラ
(株式会社 東陽テクニカ提供)

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DIDSON固定用のフレームの作成(猿払イトウの会による)

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DIDSON設置地点(陸上監視カメラも設置)

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現場での設置作業は危険も伴う

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左にCCDカメラ、右にDIDSONを設置(ともに板の下)

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イトウの模型を使って撮影状況の確認

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問題発生。イトウの産卵河川が倒木でふさがってしまいました。

DIDSONにて撮影された映像

(株式会社 東陽テクニカ提供)


映像の再生にはプラグインが必要になる場合があります。ご了承ください。

2013年5月7日夜10時ころにDIDSONにより撮影された2尾のイトウです。いずれも1m近い大型の個体です。この扇型の画像に超音波診断装置を連想されるかもしれません。実は原理はまったく同じで、胎児を見るエコー検査と同じように、夜の川の中を泳ぐ魚の姿をとらえているのです。周波数1.8MHzを使用し、0.3°感覚に計96本のビームで物体を検出します。音によるイトウの「影」が見えるのもおもしろいです。希少種であるイトウにストレスをかけずに生態を知ることができるのもこの手法の大きな特徴です。

その他の画像

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2013/5/7撮影
(東陽テクニカ提供)



横から撮影した映像と上から撮影した映像を合成したものです
(東京大学 生産技術研究所 浅田研究室提供)

Last updated 2013-May-29