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背景

当研究所は、国内に分布する希少な野生動物の遺伝資源保存を2002年より開始しました。2015年9月の時点で、108種2,630個体を受け入れ、凍結保存チューブ56,742本分の遺伝資源(培養細胞、臓器、DNA等)の保存に成功しました。現在は、海外、特に東南アジアのバイオダイバーシテイーホットスポットと言われる地域において希少な野生動物の遺伝資源保存を開始する準備をすすめています。

遺伝資源の保存は生息域外保全の一環で行うものであるため、単に培養細胞、臓器、DNA等を将来の有効活用のために保存するためだけに行う活動ではなく、希少な野生動物が現在直面する問題を解決するための研究に試料を提供するという役割も担っています。希少な野生動物の保全に関連する研究は遺伝学、繁殖学、感染症学等、多岐にわたるため、国立環境研究所では研究活動を強化、推進するための組織が必要となっていました。


目的と達成目標

絶滅危惧種の遺伝資源を収集し、長期に凍結保存する体制を構築するとともに、収集した遺伝資源を活用し絶滅危惧種の保全に寄与する研究を行います。また、関連分野の所外研究者と連携できる体制を新たに作り、研究活動の効率化を図ります(新組織名:野生動物ゲノム連携研究グループ)。野生動物ゲノム連携研究グループは下記の研究を行います。

サブテーマ1 『遺伝資源保存バンク機能の強化』
(担当機関:京都大学野生動物研究センター、国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター)

絶滅危惧種(環境省レッドリスト掲載種、IUCN Red List of Threatened Species掲載種等)の死亡個体や飼育個体から遺伝資源(培養細胞、組織標本、DNA等)を両機関で収集・凍結保存します。また、予測不可能な事態による遺伝資源の損害を最小限にするため、バックアップ体制として収集した遺伝資源を相互に移送し凍結保存します。

サブテーマ2 『保全遺伝学研究の推進』
(担当機関:京都大学野生動物研究センター、酪農学園大学獣医学群獣医学類、国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター)

凍結保存中の遺伝資源を活用して、絶滅危惧種のゲノム解析を行います。その解析結果をもとに、新規の各種遺伝的マーカー(マイクロサテライトマーカー、SNPマーカー等)を開発し、絶滅危惧種の遺伝的多様性、系統解析等の研究に活用します。

サブテーマ3 『遺伝資源の有効利用法開発』
(担当機関:国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター、筑波大学生命環境科学研究科、東北大学大学院農学研究科)

絶滅危惧種由来の培養細胞から株化細胞およびiPS細胞を樹立するための手法開発を行います。また、始原生殖細胞を活用した絶滅危惧種の個体増殖手法に関して鳥類をモデルに研究を行います。



2016年度の研究概要

遺伝資源保存バンク機能の強化

絶滅危惧種(環境省レッドリスト掲載種、IUCN Red List of Threatened Species掲載種等)の死亡個体や飼育個体から遺伝資源(培養細胞、組織標本、DNA等)を両機関で収集・凍結保存します。また、予測不可能な事態による遺伝資源の損害を最小限にするため、バックアップ体制として収集した遺伝資源を相互に移送し凍結保存します。

保全遺伝学研究の推進

凍結保存中の遺伝資源を活用して、絶滅危惧種のゲノム解析を行います。その解析結果をもとに、新規の各種遺伝的マーカー(マイクロサテライトマーカー、SNPマーカー等)を開発し、絶滅危惧種の遺伝的多様性、系統解析等の研究に活用します。

遺伝資源の有効利用法開発

絶滅危惧種由来の培養細胞から株化細胞およびiPS細胞を樹立するための手法開発を行います。また、始原生殖細胞を活用した絶滅危惧種の個体増殖手法に関して鳥類をモデルに研究を行います。


これまでの成果概要

1. 試料保存

動物園などの飼育施設の協力を得て、飼育動物の DNA を抽出し、これまでに 26,619 試料を保存しました。細胞についても保存を進めました。
連携研究グループのメンバーとの共同で、試料データベースの検索プログラムの開発を進めました。一部の試料の情報を、国立環境研究所、京都大学野生動物研究センター、京都市動物園が共同運営するホームページにおいて公開し、興味のある研究者がアクセスできるようにしました。
連携研究グループのメンバーとの共同で、希少動物の精子のフリーズドライ保存の研究をすすめ、論文を発表しました。

2. ゲノム解析

次世代シーケンサーを用いて、連携研究グループのメンバーとの共同で、絶滅危惧種のゲノム配列を解析しました。
アカガシラカラスバト、グラスカッタ−など野生動物の糞から食物の種分析を行いました。
イヌワシなど野生動物各種のマーカーを新規開発し、多様性を解析しました。

3. 細胞の解析

連携研究グループのメンバーとの共同で、ヤンバルクイナなどの細胞株の染色体解析を進めました。今後、iPS 細胞についても研究を進める予定です。

4. 国際集会

連携研究グループの大沼らが中心となり、9月16−19日、『第20回日本野生動物医学会大会』をつくば国際会議場で開催しました。
最終日の国際セミナー(9月19日、国立環境研究所)には、約100名の参加があり、11の口演と23のポスター発表が行われました。アメリカ、イギリス、ノルウェーからの海外招待講演者を交えて、野生動物のゲノム研究に関する情報交換を行い、今後の研究協力に向けて有意義な機会となりました。


共同研究機関・研究メンバー

共同研究機関

研究活動の効率化を図るため、関連分野の所外研究者と連携して研究を進めています。

・京都大学野生動物研究センター
・岩手大学大学院連合農学研究科
・筑波大学生命環境科学研究科
・酪農学園大学獣医学群獣医学類

研究メンバー

村山 美穂(京都大学 野生動物研究センター教授) 田島 淳史(筑波大学 生命環境科学研究科教授)
中嶋 信美(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター) 浅野 敦之(筑波大学 生命環境科学研究科助教)
大沼 学(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター) 遠藤 大二(酪農学園大学 獣医学群獣医学類教授)
五箇 公一(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター) 金子 武人(京都大学大学院 医学研究科特定講師)
片山 雅史(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター) 福田 智一(岩手大学 理工学部教授)


関連リンク

環境試料タイムカプセル棟
環境ゲノム科学研究推進事業

Last updated Sep. 1, 2016