2011年11月 TPM8 | 生物・生態系環境研究センター| NIES

2011年11月21-24日 第8回日韓中三か国環境研究機関長会合(TPM8)参加報告

五箇公一・山野博哉・大沼 学

国立環境研究所は、平成23年11月21日(月)~平成23年11月24日(木)に沖縄県において第8回日韓中三カ国環境研究機関長会合(TPM8)を開催しました。日韓中三カ国環境研究機関長会合(TPM)は、日本、韓国、中国における環境研究の一層の推進のため、三カ国の中核的環境研究機関である、国立環境研究所(NIES、日本)、国立環境科学院(NIER、韓国)、中国環境科学研究院(CRAES、中国) の3研究機関長および研究員らが一同に会して、アジア地域の環境研究の推進に関する議論を行う会議です。2004年からスタートし、毎年、いずれかの国で開催されており、8回目となる今年は日本がホスト国として会議を主催しました。生物・生態系環境研究センターからは、五箇公一、山野博哉、大沼学が参加しました。

会議場は、沖縄県名護市のオキナワマリオットリゾート&スパという、海を臨む大変美しい場所で、参加者全員が南国ムードを堪能していました。21日の本会議では、各国の研究所より地球温暖化や生物多様性保全など、主要な環境問題について、今後取り組むべき課題を提案し、3カ国間での共同研究の可能性について議論しました。
tpm8_all.png

 22日には、「アジアの大気汚染」と「生物多様性保全」をテーマとした国際ワークショップが一般公開という形で開催されました。3カ国の関連する研究者達が、それぞれ自分たちの国における研究成果について報告し、討議しました。本ワークショップで、五箇は外来種防除、山野はサンゴに対する温暖化影響、大沼はヤンバルクイナの繁殖学的および遺伝学的研究について、それぞれ国立環境研究所における取り組みを紹介しました。国土の大きさや、地理的条件、自然環境が異なる3カ国の間では、直面する問題の性質や、問題に対する捉え方にも様々に違いがあり、すべての発表で活発な質疑と討論が繰り返されました。

onuma.png
大沼 学

yamano.png

山野 博哉

goka.png
五箇 公一

23日は、スタディツアーとして、沖縄本島北部(ヤンバル地域)にある国立環境研究所あるいは環境省が管理する環境研究関連施設を参加者で見学に行きました。午前中は国立環境研究所・辺戸岬大気・エアロゾル観測ステーションを見学し、午後に環境省・やんばる野生生物保護センターを見学しました。
やんばる野生生物保護センターでは、環境省の阪口氏、福田氏にヤンバルクイナの飼育繁殖事業について説明をしていただきました。特に、大型スクリーンに映し出されるヤンバルクイナの姿に見学者一同、目が釘付けになりました。ちょうど前日のワークショップで、五箇がマングースの防除について報告していたこともあって、マングースの剥製を見た見学者は「ヤンバルクイナの脅威になる動物がこれほど小型とは思わなかった」 と驚いていました。
次にヤンバルクイナ飼育・繁殖施設へ移動し、ここでは現場での作業を担当しているNPO法人どうぶつたちの病院の江藤さんより飼育管理業務の概要について説明していただいきました。また、大沼がヤンバルクイナのミトコンドリアDNAの遺伝子型で現在残っているのは4タイプのみで、その4タイプを残すよう繁殖計画を立案することが重要であることを強調しました。   
さらに、特別な許可をいただき飼育されているヤンバルクイナを見学させていただきました。通常はヤンバルクイナを手が届くような距離で見ることはまず不可能であるため、見学者にとっては非常に貴重な機会になりました。
今回、ヤンバルクイナの生息地や飼育施設を実際に見ていただいたことで、日本における絶滅危惧種の保全活動の最前線を中国や韓国の研究者に正確に伝えられたのではないかと思います。
yanbaru.png
ヤンバルクイナの遺伝学的研究について説明する大沼(左から2番目)と3か国の参加者

24日は引き続きスタディツアー。琉球大学、沖縄県衛生環境研究所、美ら海水族館と、いずれも沖縄を代表する教育研究機関を巡りました。
まず、琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設を訪れ、サンゴ飼育施設やサンゴへの海洋酸性化影響評価を行う装置を見学しました。見学者のほとんどはサンゴを実際に見たことがなく、水槽で飼育されているサンゴはかなりの注目を集めていたようです。対応してくださった琉球大学の酒井先生と波利井先生、そして山野は説明に飛び回ることになりました。22日のワークショップでも酒井先生と山野がサンゴについて発表しましたが、その時の反応に比べると段違いでした。やはり実物があると格段にコミュニケーションが進みました。
その後、美ら海水族館を見学し、サンゴ礁に棲む色とりどりの魚や、ジンベエザメが大注目の的でした。引き続き那覇近くにある琉球大学の本学に移動し、資料館である風樹館を見学しました。こちらには、生物標本だけでなく考古学の標本もたくさん所蔵・展示されています。
最後に沖縄県衛生環境研究所での見学を行い、沖縄県での環境研究を紹介していただきました。沖縄ならではの環境問題である陸から海への赤土流出や、ハブをはじめとする有毒生物の研究もたいへん進んでおり、地方環境研究所のパワーを改めて感じました。

こうして4日間に渡る会議とツアーを終え、3カ国の研究者たちはお互いの国の環境研究最前線に触れるとともに、親睦を深め、それぞれの研究所への帰路につきました。今回のTPMにおける生物多様性分野の成果としては、後日、韓国の国立環境科学院NIER所長より、国立環境研究所と外来種対策の共同研究体制構築のご提案をお送り頂いたことです。現在、具体的な研究計画を検討しています。
この度のTPMスタディツアーで見学対応・説明対応してくださった方々にこの場をお借りして御礼申し上げます。

tpm8_3.png

全ての写真:大東正巳