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ヌマガエル

基本・侵入情報 参考資料リスト
基本情報
和名 ヌマガエル

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ヌマガエル
分類群 両生綱 無尾目 アカガエル科
(Ranidae, Anura, Amphibia)
学名 Fejervarya kawamurai
主なシノニム Rana limnocharis, Fejervarya limnocharis
英名等 Indian rice frog, Indian cricket frog, Boie's wart frog, grass frog, field frog, paddy frog, white-lined frog, marsh frog, paddyfield frog
自然分布 本州中部以西・四国・九州と一部の島嶼(平戸,天草など),奄美諸島(与論島を除くほぼ全域),沖縄諸島(一部の島嶼を除く),台湾(西半部),大陸中国中~北部
形態 体長29~54mm.体重2.1~15.4g.腹面は白く,背側線はない.背面正中線に淡色の筋模様を持つ個体もいる.染色体数2n=26.
生息環境 水田付近,河川敷など.
温度選好性:不明であるが,分布域からみて,本州産のカエル類の中では低温耐性がそれほど高くないと考えられる.一方高温耐性はきわめて高く,幼生の高温耐性は43度と,報告されているカエル類の中で最も高いことが知られる.
繁殖生態 繁殖期:5~8月.
雄は水田などで「グエッ,グエッ,…」等と聞こえる声で鳴く.卵は小さな卵塊として何度にも分けて産出され,水面に層状に浮く.幼生の高温耐性は高い.産仔数:一腹内の完熟卵数は1,100~1,400個.
生態的特性 水田に大きく依存した種であり,高密度に生息し,繁殖期には大声で鳴くため存在は確認しやすい..
食性:肉食性.アリ等の昆虫やクモ,ミミズ,ダンゴムシ等.共食いすることもある.比較的小さな食物を好む.
侵入情報
国内移入分布 関東地方では,利根川・渡良瀬川流域・房総半島(千葉県,埼玉県,群馬県,栃木県),神奈川県横浜市,東京都足立区・江戸川区.長崎県島嶼部では,対馬,壱岐,五島列島(平戸には自然分布).2011年に種子島でも見つかった(定着の有無不明). 国内分布図
※必ずしも色が塗られた地域全体に分布するわけではありません
移入元 長崎県島嶼の個体群は,長崎県本土由来と考えられている.他地域のものも,日本国内と考えられている.東京都のものは,関東北部の移入個体群の自然分散と考えられている.
侵入経路 不明であるが,稲藁や苗,土砂などに混入して非意図的に持ち込まれた可能性が高い.
侵入年代 1990年代になって神奈川,千葉,栃木,群馬の各県でそれぞれ確認された.栃木県と群馬県ではいずれも1999年9月に初めて記録され,両県ともその時点で定着し,多数が生息している状態であった.東京都での初確認は,足立区で2007年,江戸川区で2009年.対馬では2001年,壱岐では2003年に確認され,壱岐ではこの時点でほぼ全域に広がっていた.
影響 在来カエル類との競合
影響を受ける在来生物:ニッチが重複するトウキョウダルマガエルなどの在来カエル類
法的扱い 特になし.
防除方法 繁殖期を中心に水辺を見回り,成体や卵塊,幼生を取り除くことが現実的.
問題点等 情報整理中
海外移入分布 不明.
備考
過去10年ほどの間に関東地方の数ヶ所と壱岐,対馬で相次いで見つかり,分布域を広げている.いずれも人為分布と考えられるが,日本のカエル類の中で,近年の侵入が最も頻繁に生じている種であり,注意を要する.特に利根川水系の集団は川に沿って分布を拡大していると見られ,今後,関東平野の広い範囲に分散することが予測される.在来種の生息状況も含め,今後のモニタリングが必要である.尚,近年の関東地方における分布拡大は,温暖化が一因である可能性も指摘されている.

近年の分類変更により,インド~東南アジア~東アジアに広域分布するとされたF. limnocharisは複数種に分割され,日本~台湾~大陸中国中北部のものはF. kawamuraiとなった.また,本属を含むいくつかの属をヌマガエル科 Dicroglossidae に移すべきという見解もある.
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